まめ知識

耳がカットされた猫のひみつ 地域猫活動が生んだ「さくらねこ」とは

(ペットdeペット編集部)

 

片耳がV字カットになっている猫を見かけたことはありませんか?そのような猫を見たときに、事故や喧嘩による怪我、それとも生まれつきなのでは?と考える人も少なくないでしょう。

実はこの耳カット、猫を思う人たちの手で施されています。耳カットになっている猫は外にいるけれど、人間に見守られている証なのです。

今回は「現在起こっている猫の問題」と、それを解決しようとする「猫の耳カット」についてご紹介します。

目次

日本における猫の殺処分数の問題

日本で犬・猫が毎年、数多く殺処分になっていることはご存知ですか。

2019年4月1日~2020年3月31日の1年間では、32,743頭の犬・猫が殺処分されました。

毎年、着実に殺処分の数は減っているのですが、まだまだ多く感じると思います。

そして、殺処分数の8割以上は猫です。その中でも幼猫が半数以上を占めています。

出典:「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」(環境省) (https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html)(2021年5月14日に利用)

猫の殺処分が多い理由は

どうして犬よりも猫の殺処分が圧倒的に多いでしょうか。それは私たちが普段、野良犬を見かけなくなったことと関係しています。

まず野良犬を見かけなくなった理由の1つは、狂犬病予防法第6条によって、管理されていない犬は積極的に保護されるようになったことです。これにより町中で野良犬を見かけることがとても少なくなったと思います。

そして2つめは、狂犬病予防法第4条によって、犬を飼うときには飼い主が必ず登録を行わなければならなくなったことです。登録を行うことにより、飼い主は犬を安易に手放すことが出来なくなったのです。

このように犬はしっかりと管理され、人間が管理できない外での繁殖が大幅に減ったことで野良犬を見かけることが少なくなりました。

犬と比べ、猫は?

猫の場合は、犬のように法律が定められているわけではありません。

そのため、猫を積極的に保護することも難しいですし、登録などの手続きもないため、飼えなくなったら安易に捨ててしまう飼い主が絶えません。

たとえ飼っていたとしても、未去勢未避妊の猫を放し飼いにしている飼い主も多くいます。

猫の繁殖を減らすことは犬に比べ、とても難しい問題であることが分かりますね…。

地域猫活動によるTNRとは

公益財団法人「どうぶつ基金」では、そのような猫たちの命を守るため、2005年から「TNR活動」を続けています。

TNRは、「Trap(トラップ):捕獲すること」、「Neuter(ニューター):不妊手術」、「Return(リターン):元の場所に戻す」という頭文字を取っています。

TNR活動は上記の通り、猫を捕獲して不妊手術を施し、また元の地域に戻すというもの。その地域の全ての猫に対して不妊手術を行うことで、だんだんと野良猫が減るという仕組みです。

TNR活動によって不妊手術を受けた猫は地域猫として最後まで見守られ、その命を全うすることが出来ます。

「さくらねこ」の誕生

TNR活動により不妊手術をした猫ですが、目印がなくては再度TNRの対象になってしまう可能性があります。

実はその目印が、耳カット。

耳カットの多くはV字カットです。まるでさくらの花びらのように見えることから、その耳を「さくら耳」、そしてさくら耳を持つ不妊手術済みの猫を「さくらねこ」と名付けたようです。

(多くはV字カットですが、中には水平カットの子や、ピアスを付けた子もいます。)

耳カットは片耳のみで、右耳がカットされている猫はオス猫、左耳がカットされている猫はメス猫というルールがあります。

耳をカットされて、痛くない?

耳カットは不妊手術の全身麻酔が効いている間にカットするためカット時に痛みはありません。

目が覚めたあとも、出血をすることはなく、思うほどの痛みはなさそうです。

「さくらねこ」は連れて帰ってもいいの?

猫を飼うキッカケとして、野良猫を保護する方も多いですよね。

さくらねこは地域で見守られている猫ではありますが、飼い主はいません。もし猫をお家に迎えたいと考えるのであれば、是非さくらねこを視野にいれてみてください。

野良猫の平均寿命は3~4歳ほどだと言われています。それに比べ、家に住む猫の平均寿命は約15歳と、10年以上も差があるのです。

外の暮らしはそれほど過酷なのでしょう。

野良猫が人間と共に家の中で暮らすようになると、顔つきが見違えるほどに優しくなります。

さいごに

野良猫の問題は深刻です。

しかし、そのような状況を改善しようと、猫を思う活動家たちが日々努力していることを一人でも多くの人に伝えていきましょう。

それは、ペットを安易に捨ててしまう人間や多頭飼育崩壊などの問題の減少、最終的に殺処分数が0になることに必ず繋がります。

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ペットdeペット編集部 茨城県出身。現在、猫2匹とルームシェアをしています。キャットケアスペシャリスト。

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